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哀れとも いふべき人は おもほえで

身のいたづらに なりぬべきかな

作者:謙徳公(けんとくこう)

解説

「拾遺集」の詞書には、「ものひはべりける女の、後につれなくはべりて、さらに逢はずはべりけれ(作者が言い寄った女性が冷たくなり、逢ってもくれなくなってしまった)」とあります。

自分が孤独なのを、「おもほえで(誰も想い浮かばない)」と強調し、女々しく相手に気にかけてもらおうとしています。

しかも、失恋して死んでしまいそうとは、とても大袈裟です。

しかし、この当時は、恋に悩み死んでしまうと思うくらいの男性のほうが、男らしいと思われていたようです。

時代を感じます。

今では考えられないですね。

このような歌は、当時女性が歌うのが普通でしたが、男性が歌うのは珍しいことです。

 

文法の意味と解釈

※ 「哀れとも いふべき人」の「哀れ」は、感動詞です。

愛情や過ぎ去ったことを名残り惜しんだり、悲しいと思う気持ちなど幅広い意味で使われますが、この歌では「かわいそう。気の毒」の意味です。

「べき」は助動詞「べし」の連体形で推量(~だろう、~しそうだ、~ちがいない)を表します。

「いふべきひと」は「言ってくれるだろう人」の意味です。

※ 「おもほえで」の「おもほえ」は、「おもほゆ」の未然形です

「で」は未然形につく打消接続(~しないで、~なくて)で、「思いあたらないで」の意味です。

※ 「いたづらに」は、むなしいや、死んでしまうという意味です。

※ 「なりぬべきかな」の「ぬ」は、助動詞で、強意、確認(確定的に強意する意)です。(きっと~、確かに~)

「べき」は、先の「いふべき」と同じく連体形で推量を表しています。

「ぬ」と「べき」が結びつき「きっと~だろう」という意味になります。

「かな」は終助詞で、詠嘆を表します。(~だなあ、~ことよ)

ですので、「きっと、死んしまいそうなのだなあ」の訳になります。

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