
月見れば 千々にものこそ 悲しけれ
わが身ひとつの 秋にはあらねど
作者:大江千里(おおえのちさと)
解説
この歌は、中国(唐)の大詩人「白居易(白楽天)」の「白氏文集(はくしもんしゅう)」の中の漢詩「燕子楼中霜月の夜、秋来たってただひとりのために長し(秋來只爲一人長)」を翻案したものと言われています。
もともと、「秋の夜は私一人のために長い」の部分を、逆の意味の「秋は、私一人のためのものではないのに」とアレンジしています。
また、「月」と「我が身」、「千々(数が多いこと)」と「ひとつ」をうまく対応させています。
これは、対句と言って漢詩の手法です。
文法の意味と解説
※ ものこそ悲しけれ
「物悲し」を強めた言い方です。係助詞「こそ」に続く形容詞「悲し」が、已然形「悲しけれ」で結ばれる係り結びになっています。「本当に~なあ」の意味になるので、「いろんなことが本当に悲しくかんじられるなあ」の訳になります。
※ 秋にはあらねど
「ね」は打消しの助動詞「ず」(動作、状態を打ち消す)の已然形です。「~ない」の意味になります。「ど」は逆説を表す接続助詞です。「~が。~のに」の意味になります。ですので、「秋ではないのに。秋ではないのだが」の訳になります。
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